参考

朝鮮の命婦

  日本の官制は中国(明や清)および朝鮮の影響を多分にうけておりその組織の名称や機能もにかよったものが多いのです。 

近代社会といわれる時代が到来するまで、アジア諸国でこの官制を厳格に適用していたのが朝鮮王朝でした。そして、お隣の朝鮮の王朝にも「命婦」と呼ばれる組織制度があったようです。

日本と同じく「内命婦」「外命婦」と同じ呼称で呼ばれる組織があります。
その組織の基本的な考え方は日本と似ています。違うところは朝鮮の場合その職階や位が細かく規定されており、日本や中国と比較してその運用がより厳格でした。

「内命婦」は宮中に仕える女官や後宮(朝鮮では側室をさす)の組織の事であり、以下のような細かい規定のもとに定められていました。
この組織を統括したのは皇后だったようです。(皇后は無位階)

「外命婦」の場合は夫の官位相当の官位が与えられます。宗親や外戚(王族やその親戚)以外は堂上官(正三品以上)以上の位階を持つものでなければ昇殿できなかったのですが、基本的には「外命婦」の婦人も堂上官の妻であれば自然に堂上官となり、昇殿ができました。


◆朝鮮命婦位階◆

品階/部署
内命婦
外命婦
王宮
世子宮
王室宗親女
宗親妻
文武官妻
無階
公主 翁主
正一品
府夫人
府夫人
貞敬夫人
従一品
貴人
奉保夫人
郡夫人
貞敬夫人
正二品
昭儀
郡主
県夫人
貞夫人
従二品
淑儀
良悌
県主
県夫人
貞夫人
正三品
(堂上官)
昭容
慎夫人
淑夫人
正三品
(堂下官)
昭容
慎人
淑人
従三品
淑容
良媛
慎人
淑人
正四品
昭媛
恵人
令人
従四品
淑媛
承徽
恵人
令人
正五品
尚宮 尚儀
温人
恭人
従五品
尚服 尚食
昭訓
温人
恭人
正六品
尚寝 尚功
順人
宜人
従六品
 尚正 尚記
守則
宜人
正七品
 典賓 典衣 典膳
安人
従七品
典設 典製 典言
掌饌 掌正
安人
正八品
典賛 典飾 典薬
端人
従八品
典燈 典彩 典正
掌書
端人
正九品
奏宮 奏商 奏角
孺人
従九品
奏変徴 奏徴
奏羽 奏変宮
掌蔵 掌食 掌医
孺人


 「王宮」:文字通り王様のいらっしゃる御殿。基本的に王宮に住んでいる、後宮(側室)と王など
 のお世話する宮女です。
 「世子宮」:王世子(皇太子)の住む東宮であり、王世子の側室とその世話をする宮女(従六品
 「守則」以下)です。



少し本分から外れた感がありますことをお詫びいたします。アジア圏の官職に興味のある方は、拙作HP「亜細亜之官職」をご覧ください。

 さて、命婦とは文字が表すとおり女性の意味でありますが、当時の大和朝廷の事情から推察するならば、命婦の女官は朝廷での大きな勢力となっており、天皇の政が円滑にすすめられるように扶助しており、高級女官になると、ある意味で女でありながら政に干渉して重要な事柄にも関わっていたようです。
 そういった意味でも、特に平安期以降はなくてはならぬ存在であったと思われます。
その意味でも「命婦」という御位がどれだけ重要であったかうかがえます。

 本来の女性(女官、婦人)が内助の功で主人(天皇、夫)を扶助するの意味から、稲荷大神様をお助けする御眷属の「白狐」をそれにたとえて「命婦」の位を授位されたのです。

 祐徳稲荷を勧請された「祐徳院(花山院)萬子」様は終生、神仏への熱心な信仰をされた方であり、上記御位の授与に関する御由緒にもあるように萬子媛没後のお話とされています。
また「命婦社」とのかかわり深いことや、御神門前の御神狐(母子御神狐像)など女性や母性を象徴する事物が多いのです。
 その先入観からか祐徳稲荷の神様は女神様のイメージが大変強いのです。
皆さんはどうでしょうか?